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子鳩のコトバ

 

 

 

灰色の空があたり一面に放つ匂いに気付けば

空の只中からすでに幾つかの微小な氷が落ちてきて

地面に着地して消えた、を繰り返しはじめている

 

水からの状態変化が成す氷→雪へは、緩やかに、汲々として

実写から乖離した、世界の傘の下

 

傘を打つ音だけが知る、その形状を、傘を外して見上げれば

蠢き急降下する、埃、あるいは、塵

 

瞼に載った僅かに湿る光の粒に世界は覆われてしまい

途方もなく佇むわたしは飛ばせた子鳩を思う

 

大きさも不揃いな、空気の層の中から毒素を吸い込んだ

白い羽のよう、と形容されるものの正体は

わたしたちが棄てたものたちで、

羽であるなら、子鳩であろうよ、コバトであろうよ

 

空の中心点に立ったポールを目印に飛んだはずの塵が

羽化して、降る、フル、ふる、

たくさんの不揃いのコバトが嘴に加えた葉の色も

今日は緑を失い、収束の末期に滅されていく

 

目印を失った、羽も濡れた、その身を、傘で隠し持ち

 

二層構造の傘はコバトの留場

音はすべて吸引されて、どこか知らない場所へ遺棄される

 

天空から傘の丸い円はみつかるだろうか

 

隣のわたしが、目を瞑り、空を見上げ、ただ流れに沿って

歩いてゆくように見える姿を、描写するコトバよ

 

巡廻しながら肩から肩へと渡るうちに、

わたしの匂いを掠め取り、空へ放つ、子鳩の

囀りが聞こえたような気がして足元を見ると

 

小さな影が横切ってゆくのが見えた

 

 

 

 

2014年4月 文学極道月間優良作品 次点佳作

 

 

 

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