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星のアリス

 

 

箱から出ておゆき、羊たち
呑み込んだ象を吐き出すんだ、うわばみ

 

立つことが精一杯の星の上で
灯りを消す、点ける
(日の出と日の入りのあわいは僅か)
薔薇を宇宙の風から守る
(風は吹くのを止めた)

穴から落ちればパラレルワールド
次元を捻じらせたうさぎが走る
うさぎの名前は、ない
(名もなきものは虚構)

 

全てがデタラメだという、あなたの世界が
滑らかに流れているという証拠を見せてごらんよ
綻びたポケットから零れ落ちた読解文の解答例ではなく
身体にプログラミングされた名もなきソースで

 

砂漠という瑞々しい場所の真下で
滾々と湧き続ける、わたしというわたしが
今日も誰にも知られずに消えてゆくのを
砂漠の砂は噛んでいる

 

王子さまを見たのが
空の青さの万華鏡が尾長鳥を籠に追い込んだ朝で
そこにわたしか、わたしではない誰かが立っているのを
見ていたのは誰?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2014.5.5刊行 梁川梨里第一詩集(私家版冊子)「月を剥く」より

 

 

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